子供の歯並びが気になる
子供の歯並びで悩んだときに知っておきたいこと
子供の歯が生えてくると「この生え方で大丈夫かな・・・」ということや、歯並びがあまりよくない場合には、矯正を始める時期や費用が気になると思います。そんな親御さんのために子供の歯並びについてまとめてみたので、子供の歯並びについて考えるときの参考にしてみてください。
今の考え方としては、お子さんの時期には、姿勢をなおしたり、習癖を除去したり、よくかむという習慣をみにつけて奥歯のかみ合わせを整えておくことが一番大切です。
実は子供の時期の単なる鼻づまりや口呼吸が、閉鎖型の歯列弓や舌の肥大を促し、歯並びを見出し関節の位置変化による顎関節症、そして突然死の原因ともなりうるSAS(睡眠時無呼吸症候群)までも引き起こすことがわかってきました。
そのため以前は8歳ぐらいからの床矯正を勧めていた我々も6歳からのマウスピースによる矯正や場合によっては反対咬合や開口などの場合3歳ぐらいからの矯正をすすめるケースも増えてきています。
それではどんな歯並びで矯正が必要なのかを見ていきたいと思います。
1.子供の歯並びで矯正が必要な例
最初に一般的に矯正をするべきだとされている歯並びの例を紹介します。「矯正必要度」は矯正を見送ることによる『将来的なデメリットの大きさ』、『顔の印象への影響の度合い』などを基準に評価したものです。矯正を検討するときの参考にしてみてください。
叢生(乱ぐい歯・八重歯・ガタガタの歯並び)
叢生(そうせい)とは、歯が重なって生えてデコボコになってしまっている状態の歯並びのことをさします。硬いものを噛まないことによるアゴの筋肉の退化が原因で、近年多く見られる症例です。しゃべるときの発音や、顔の印象にも大きく影響しますし、噛み合わせが悪くなり、歯や消化器に負担をかけてしまう事にもなります。それだけでなく、磨き残しが増えやすいため、虫歯になりやすく、将来的に歯周病にかかって通常よりも若くして歯を失ってしまうリスクが考えられます。
しかし、この一番目立つ叢生の治療は、大人になってからでも間に合います。奥歯の関係が良好であるならあまり神経質にならずにお子さんの悪い姿勢や口呼吸、そして噛まない状態などを予防することで歯列弓の拡大を図っていけば子供の時期の矯正の主体は終わりです。
歯科医の間では矯正治療の判断の際に左右上下の6番目の歯(第一大臼歯)の位置関係を重視していますが、この関係が正しいなら、小児の時期にはトレーニングだけで矯正装置は入れないケースもあります。
開咬(オープンバイト)
開咬(かいこう)とは、別名「オープンバイト」といい、前歯がしっかり噛み合わない状態のことをいいます。こちらも成人してから虫歯や歯周病に悩まされるケースが多い歯並びの1つです。
また、奥歯に非常に負担が偏るので、将来的に奥歯を壊してしまいやすい状態にもなります。
これは上顎の劣成長(成長不足)が原因によって起こります。
実はお子さんで矯正が必要な場合の原因のほとんどはこの上顎の劣成長です。
受け口も出っ歯も原因は口呼吸、あまり噛まない、そして姿勢が悪いということから起こっています。
開口のケースは大人になってからの矯正が一番やっかいなケースですので、相当に早い時期からのトレーニングや矯正が必要になってきます!
受け口(下顎前突)
簡単にいうと、下のアゴが上のアゴよりも前にでていることを指します。受け口は顔の印象に大きく影響し、全体としてしゃくれた顔つきになってしまいます。某有名プロレスラーを代表とする顎の形は、あまりひどくなると矯正装置では対応できず、骨切りと言われる外科処置そしてその後の矯正が必要になります。
上下の6番目の歯(第一大臼歯)の位置関係が、この場合は上の6番目の歯の位置が相対的に後にきていることが多く、3級咬合と呼ばれます。(かみ合わせだけでなく骨格的にこうなっている方もいます)
お子さんの時期のマウスピースの矯正も出っ歯系の治療よりも早い時期からの矯正が必要で、3歳ぐらいからのマウスピース矯正をおすすめしています。
ただこのマウスピース矯正だけでこの咬合が完全に治ることは稀であり、ある程度の因子を大人になってからの矯正で修正するというやり方が普通になります。
出っ歯(上顎前突)
出っ歯とは、「上顎の前歯全体が突出している状態」のことを指しますが、具体的には下記の状態になっていることを指します。
その上の歯の方向性が前向きになるものを出っ歯、噛み合わせが垂直方向に深くなっていくものを過蓋咬合と呼んでいます。
上下の6番目の歯(第一大臼歯)の位置関係が、この場合は上の6番目の歯の位置が相対的に前にきていることが多く、2級咬合と呼ばれます。(その上で出っ歯傾向の方は2級1類と呼ばれます)
ものまね名人の方がわざと前歯をつけて某お笑い怪獣?の顔をつくっていますが、外国ではほとんど許されない歯並びで一番目立つ印象になってしまいます。
特徴しては
・前歯の先端が唇の間から見えてしまう。
・横から見ると前歯が突き出している。
・歯茎が前にでている。
・Eラインに対して、唇が前にでている。
※Eラインについて
正しくは「エステティックライン」と言い。アメリカの矯正歯科医師が横顔の美しさの基準として発表したものです。人の横顔を見たときに鼻の先端と顎の先端を結んだ直線の状態で、その人の美人度を判断します。日本人の場合は骨格上、Eラインよりも唇が前にでている事が多く、モデルや芸能人になりたいということが無い限りあまり気にすることはないようです。
この原因も上顎骨が過成長していることは稀で、下顎骨が後方位であることによって起こる事が多いとされています。噛む刺激による下顎骨へのアプローチによって治していく症例です。大人まで放置すると、やはり骨切り(しかもこの場合は難しい上顎骨)による外科的矯正治療で対応しなければならなくなる確率が高く、外科を併用しない場合は、上下前歯の歯軸に妥協をしなければならない症例となります。
過蓋咬合
「過蓋咬合」とは俗にいう「咬み合わせが深い」状態のことを指します。難しく言うと「上下顎前歯の垂直的な被蓋(overbite)が正常範囲より深い咬合関係」、簡単にいうと「上の前歯が被さりすぎて下の前歯が見えない咬み合わせ」です。これによって顎の運動が制限されるため顎関節症になりやすい咬合です。
本来下顎は前方、側方、後方、など3次元での自由な運動をしますが、過蓋咬合は上の前歯が下の前歯に覆いかぶさっている状態のため下顎の前方や左右への動きが制限されている状態です。これによって後方部への圧迫力がかかり、顎関節への負担となり、顎関節症を誘発するきっかけとなるのです。
すべての症例でそうなるわけではありませんが、顎関節への負担となっているのは紛れもない事実です。
また過蓋咬合では上下の歯の咬み合わせが良くないため、歯に適正でない方向への力がかかりやすい傾向にあり、そのため、補綴物(被せ物、ブリッジ、入れ歯など)が壊れやすいのも特徴です。
過蓋咬合がひどい人の場合は前歯は歯どうしが噛み合わなくなって、口蓋部分に下の歯が突き上げてくるというのも特徴です。
上下の6番目の歯(第一大臼歯)の位置関係が、この場合も上の6番目の歯の位置が相対的に前にきていることが多い、2級咬合ですが過蓋咬合のの方は2級2類と呼ばれています。
出っ歯や過蓋咬合の治療には小学校を通しての成長発育としてマウスピースを使っていただき、姿勢をなおしたり、習癖を除去したり、よくかむという習慣をみにつけて奥歯のかみ合わせを整えておくことで確実に効果があります。(使わなければ効果がでません)
すきっ歯
乳歯のすきっ歯についてはあまり心配する必要はありません。永久歯に生え変わるときに必要な隙間のせいで、すきっ歯に見えてしまっているだけです。
乳歯は陣地取りとしてのスペースの確保が役目のひとつですから、スペースが余るのはどちらかといえば良いことだと思っています。しかし、唇と歯茎をつなぐ靭帯が前歯のほうまで食い込んでしまっている場合、外科手術をしなければいつまでもすきっ歯のままの可能性があります。
また永久歯になってもすきっ歯が残るというのは問題があります。左右の咬合を見たうえで引き締める矯正装置や場合によってはラミネートベニアなどの補綴(歯を削らいない方法もあります)も必要になります。
日本人のの不正咬合の割合
2.子供の歯並びの直し方
噛み合わせや、あごの発達状態には個人差があり、歯並びを治すのに最適な方法は歯科医師の診断が必要になりますが、一般的な小児矯正で取り入れられている『方法』、『矯正開始時期』、『費用』についてまとめたので参考にしてみてください。
床矯正(拡大装置を使用し、あごの骨を広げる)
こどもの歯並びが悪いのは、あごが小さいことが原因で、歯が重なって生えてしまったり、歯並びが悪くなっていることもあります。この場合、『あごを広げる装置』を装着し、あごの成長をサポートしながら永久歯がキレイに生えてくるように場所をつくってあげるのです。固定式の装置と、取り外しが可能な装置があります。
費用
装置は1つ3万円~6万円です。ただし子供の時期に1つだけの装置で合わるわけではなく、顎の大きの変化により4~5個の装置の入れ替えが必要になります。片方のあごの矯正にかかる治療費総額は15万円、上下だと30万円程かかります。しかも矯正装置によりむりやり歯を広げるだけでは、お子さんの習癖の除去に繋がりにくいため、よりシステマチックで簡単な装置への移行が考えられています。
マウスピースによる矯正
最近は小児用マウスピースによる矯正が子供用には最適とされています。
日中の1時間と夜中につけるというシステマチックになっていて、より咬むことで口呼吸を予防し、舌癖などの習癖も除去されていきます。ただつける時期によりタイプが違ったり、できるだけ長く使うことで習癖の除去を行えるので数年以上できれば5~6年の使用が推奨されます。
使用時期によりマウスピースの種類が違ったり、上顎前突に最適なものもあれば、下顎前突に適するタイプもあったりするので、術者の選択能力も要求されます。
費用
小学校の間の管理として20万以上かかります。始める時間が遅れるとマウスピースでの矯正は難しくなっていきます。習癖の除去や臼歯の関係の改善はこの時期に行わなければ大変になりますので、お子さんのうちからの矯正が必要なのです。
ブラケット(ワイヤー)を使用した矯正
最もポピュラーな矯正です。ワイヤーを歯に固定し、正しい噛み合せになるように力を加えていくことで、ねじれて生えている歯をまっすぐに揃えていきます。幅広いタイプの不正咬合治療に取り入れられています。ある程度成長した時期(中学生以降)からの矯正になるため、臼歯部関係の改善はかなりの時間を有します。いわゆる矯正歯科の先生は、ブラケットをメインで用いる矯正治療をしています。
大人になってからもブラケットを使用した矯正は可能ですが、矯正期間が長くかかるうえ、抜歯をしなければならなかったり、子供の頃に矯正を始めるのと比べると仕上がりの完成度も劣ります。
そのため小児で床矯正やマウスピースを用いて臼歯部の関係や習癖などを改善し、中学生以降で前歯の状態をできるだけ抜歯をせずに治していく1期治療と2期治療に分ける考え方もあります。
費用
小児矯正に関しては1期治療と2期治療に分けるのかという問題もあるので数値で出しにくいですが、成人矯正と比較した小児矯正とすると25~40万くらいになります。ただしその場合は、永久歯に生え変わってからの補正として後で40万程度(合わせて成人矯正と同じくらいの料金)かかる可能性があります。ちなみに、成人の治療費は全国平均で80万~100万円だといわれています。歯科医院によってはカウンセリングを無料でしてくれるところもあるので、矯正を考えている方は早めに相談し治療プランを立てるのが良いでしょう。
インビザラインを用いたマウスピース矯正
アメリカで開発されたインビザラインは、コンピューター技術を駆使して「見えない」「痛くない」装置をオーダメイドする歯科矯正法です。
1997年にアメリカで始まり、すでに全世界で340万人以上の治療実績を持つとされ、ハリウッドセレブも利用しているといわれています。最新の矯正治療なので高額なのでは?という懸念があるかもしれませんが、症例によってはリーズナブルに治療を行うことができます。
プラスティックで作られているインビザラインは、アライナーという名のマウスピースを歯に嵌める矯正装置。
人が気づかないほどの透明感があり、日常生活をいつも通り送ることができると評判です。
「歯科矯正したくても金属の装置では人前で笑えない」「矯正していることを知られたくない」という人にピッタリな治療法です。
インビザラインの治療を行うには、難しい2級、3級の症例は時間がかかりすぎるのですが、1級で前歯の叢生を中心とした悩みだけなら、マウスピースによる矯正もかなりの威力を発揮します。
つまり小児の時期に1期治療として1級咬合をつくりあげておけば、気になる時期にもう一度マウスピースだけの矯正で目立たずに治療を終わることができるわけです。
費用
治療費としてはやはり50~70万ぐらいがかかるようですので1期治療と合わせてやられることも大切です。