子供の歯並びがを悪くする原因1

子供の歯並びを悪くする原因

歯並びを悪くする原因として考えられることは遺伝、全身的な病気、局所的な病気である乳歯・永久歯の異常そして癖などが考えられます。
遺伝や全身的な病気はそれぞれ症状に対処していくしかありませんが、局所的な病気や癖などは対処法に従ってなおしていくことで大きな影響を防ぐことができます。そのためにはそれぞれの原因およびその影響などを知ることが大切です。また、悪い歯並びを残しておくとその後にどうなるのかを知ることで、お子さんのうちに歯並びを治すことの大切さもわかりますので、それについてもお知らせした行きたいと思います。

遺伝

歯並びは遺伝の影響を受けますが、それだけで決まるわけではありません。子供は容姿や骨格、体質など多くの要素を親から受け継ぎます。もちろん歯の大きさや質、顎の骨の形や大きさなどは、親から子に受け継がれますから、これらが歯並びに影響を与えることは間違いありません。約3割程度の歯並びを親から引き継いでいるとされています。
骨による影響が強い歯並びというものがあり、噛み合わせは遺伝する可能性が高くなります。
例えば、顎の骨が小さく歯が大きい場合は、顎の大きさに対して歯が大きすぎることになります。その結果、歯がきれいに並ばず、でこぼこになってしまう可能性が高いといえるでしょう。
「上顎前突(いわゆる出っ歯)」や「下顎前突(いわゆる受け口)」などは、上顎と下顎の骨の大きさのアンバランスによる影響が大きく、遺伝する可能性が高くなります。(もちろん親と生活レベルの環境が似ている場合も多いので一概に遺伝だけの影響とも考えられませんが・・・)
両親どちらかが「上顎前突」や「下顎前突」であった場合には、子供に矯正が必要かどうか早めに判断するためにも、小さいうちから定期検診を受ける習慣をつけておくと安心です。

全身的な病気(唇顎口蓋裂を含む)

全身的な病気により、歯の軟組織に影響が出る場合と硬組織(歯や骨)に影響が出ている場合があります。
一般歯科で扱うのは主に硬組織の病変ですのでそちらを中心にお知らせします。

歯の萌出遅延(晩期萌出)や埋伏

歯がなかなか生えにくい状態のことです。
全身性のものとしては鎖骨頭蓋異骨症、カルシウム代謝障害、ビタミン欠乏症によるクル病、クレチン病、下垂体前葉の機能障害、先天梅毒などが挙げられます。
歯の保存が可能であれば開窓術(歯が出てきやすい状態にする)、歯肉切除、歯の牽引などで強制的に萌出をはかります。しかし、歯の保存が不可能で周囲組織に障害を与える場合には抜歯を行います。

顎骨内に病変が存在して歯が埋伏する場合

硬化性顎炎、骨大理石病など骨硬化のある場合におこることがあります。埋伏歯によって正常な歯の萌出が妨げられ、歯列不正(歯並びが悪い)をおこすだけでなく、神経枝が埋伏歯によって圧迫され、三叉神経痛様疼痛を起こすことがあるとされています。
治療法としては、埋伏歯自身が隣在歯に障害を及ぼす場合やおそれのある時には埋伏歯は抜歯しますが、埋伏歯が有用である場合には矯正治療によって歯列内に萌出誘導させたり、また外科的に歯の移植を行います。
歯の先天性欠如やエナメル質形成不全は、遺伝や全身的な病気と限らず起こることがあるので後述します。

唇顎口蓋裂(日本人では約500人の出産に1人の割合で、日本人に多い先天異常)

口腔と顎に発生する先天性の形態異常としては、口唇裂(こうしんれつ)や口蓋裂(こうがいれつ)が最も多くみられます。また、舌にも様々な異常がみられる場合があります。
胎児がお腹のなかで成長するとき、顔は左右から伸びるいくつかの突起が癒合することによってつくられています。しかし、この癒合がうまくいかないと、その部位に裂け目が残ってしまうことで起こる病気です。これらの異常の発生する頻度は、日本人では約500人の出産に1人の割合で、日本人に多い先天異常といわれています。
原因としては妊娠の初期異常な外力や母体への栄養障害、ストレス、様々な薬の影響、風疹(ふうしん)などがあげられています。しかし、原因は不明なものが大多数を占め7割に達しています。
治療はすでにある程度確立されています。出産直後から成人するまでの長期間にわたる、一連の治療が必要となります。それには口腔外科、矯正歯科、小児歯科、形成外科、耳鼻咽喉科、小児科、言語治療科、一般歯科などによる総合治療が必要です。多くの歯科大学がすでにこの治療を行っていてフォローアップもしていまうすのでぜひご相談下さい!

乳歯・永久歯の異常

生えてきた乳歯に異常がある場合も、生え変わりで生えてくる永久歯の歯並びに影響するといわれています。

乳歯の虫歯

根元まで虫歯になってしまうと、上手く生え変わることができず、永久歯に影響がでてしまいます。生えはじめの歯は、表面にフッ素が取り込まれておらず、虫歯になりやすいと言われています。
口の中に数年あると、お茶などの様々な食品からフッ素が取り込まれて、表面にいわゆるフッ素コーティングが施されて、虫歯の出す酸に抵抗することができるようになります。
乳歯の虫歯で一番困るのが隣接面(隣の歯との間)の虫歯です。乳歯の役割として永久歯の生えてくる場所の陣地取りという側面があり、歯は生えてきた後に手前側(近心)に寄ってきますので、隣接面が虫歯になると歯はどんどん手前側に寄ってきてしまいます。
特に永久歯である第一大臼歯は、第二乳臼歯遠心(奥側)をガイドにして生えてくるので、第二乳臼歯が虫歯になることで、永久歯が本来の位置より近くに寄ってきてしまいます。
そしてその前の領域だけで、残りの永久歯は生えてくるため当然のようにスペースが足りなくなり歯並びが悪くなります。

乳歯の早期喪失

永久歯が生えてくる準備が整っていない時期に乳歯が無くなってしまうと、永久歯が見当違いの方向を向きながら生えてきてしまうことがあります。
通常永久歯は、乳歯が生えていた場所に入れ替わりで生えてくるものですが、乳歯が無い状態で永久歯が作られると永久歯の場所が不安定になってしまうからです。
永久歯は乳歯を吸収しながら生えてくるため、乳歯が抜けるとその傷が残っていることで、粘膜を突き破ることなく生えてきます。しかし、早く抜けてしまうと粘膜を突き破るために大きな力が必要になり、弱い部分をみつけて生えてくるため、場合によっては回転してしまったり、位置異常を起こしてしまうわけです。

癒合歯(ゆごうし)

2本の歯がくっついて1本になってしまっている歯のことを指します。子供の1%~3%が癒合歯を持っているといわれています。
主に前歯が癒合することが多く、①上顎AB間 ②下顎BC間 ③下顎AB間が代表的です。
乳歯の癒合歯が見られた場合、後継永久歯(その下から生えてくる大人の歯)のうち1歯が先天欠如する可能性があります。また、乳歯だけでなく永久歯にも見られる場合もあります。
癒合歯は通常よりも虫歯になりやすく、生え変わりのときに抜きにくいことが多いので自分では抜かずに歯医者にご相談ください。

過剰歯(かじょうし)

過剰歯とは文字どおり、余分な歯があるということです
通常、乳歯は全部で20本ですが、まれに21本目、22本目の歯が生えてくることがあります。
これを過剰歯と呼んでいます。
また、永久歯の場合は親知らずを含め全部で32本の歯があるのが正常な状態です。しかし、まれに体内で通常よりも多く歯胚(歯の卵)が作られてしまうことがあります。そのため本来必要ではない余分な歯が作られてしまい、過剰歯ができてしまうのです。
過剰歯は乳歯よりも永久歯で見られるケースが多く、また女児よりも男児に多く見られる傾向があります。
過剰歯が認められた場所として多く報告されているのが上顎の前歯であり、ごくまれに親知らずや小臼歯(奥歯の手前にある小さな歯)にも見られることがあります。
過剰歯ができてしまう具体的な原因についてはいまだ解明されていませんが、遺伝的なものや外傷の影響でも起こることがわかっています。
骨の中に埋まっている状態で外側から見てもわからない過剰歯を「埋没過剰歯」と呼びます。他の永久歯とは違い、逆さまの状態になっているものもあります。これを「逆生(ぎゃくせい)」と呼びます。また、前歯の中心(正中)にある過剰歯を「正中過剰歯」と呼び、正中に位置していると同時に骨のなかに埋まっている状態を「埋没正中過剰歯」と呼びます。この正中過剰歯によって歯が生えてこなかったり、永久歯の正中がよってこないなどの場合がよく見られます。
このように過剰歯には既に永久歯とともに歯ぐきに生えてきているものと、骨のなかに埋まって生えてきていないものがあり、過剰歯が永久歯の邪魔をし、永久歯が出てこないことや、歯並びが悪くなる恐れがあります。

エナメル質形成不全

さまざまな原因で歯の形成期に先天的な障害をうけて、綺麗に成長せずに歯にくぼんだ部分があったり、エナメル質の下の象牙質が露出して黄色を呈していたりする状態の事です。
一般に肉眼的に明らかなエナメル質形成不全歯は、永久歯では10%程度、乳歯ではそれより少ないといわれているものの、決して珍しいものではありません。
障害が軽い場合には、エナメル質に限局性の白斑や着色があるだけですが、障害が強くなると、エナメル質の表面に環状の凹窩、溝、不規則な欠損を生じ、エナメル質の大部分が形成されないこともあります。これらの変化の現れ方は、障害を受けた歯の発育時期、障害の種類、強さなどによって異なり、エナメル質の発育の初期であればあるほど、また障害が強いほどエナメル質の変化が著明に現れるといわれています。
歯が出来上がる時点で何らかの影響を受けたのが原因ですから、1本のみの乳歯にみられるエナメル質形成不全の時は、その後生えてくる永久歯が同じようにエナメル質形成不全になることはありません。
原因としては全身的なものと局所的なものがあります。
全身的な原因による時は、1本だけではなく同時期に造られる複数の歯に症状が出てくることが多く、エナメル質の形成時期 または発育時期に何らかの全身的障害(例えば、病気、ビタミン不足、栄養障害、ホルモン異常やフッ素等の無機物の影響、さらに遺伝など)で歯の成長が一時的に阻害されることにより起こります。
局所的な原因としては、乳歯のひどい虫歯や外傷でみられる事があります。
治療としては虫歯と同じで、必要に応じて、歯冠修復処置(虫歯と同様の処置)がおこなわれます。
小さい範囲で起こるため、虫歯と同じ扱いでよく見られる病気ですのできちんと直さないと歯の位置移動が起こる原因になりかねません。

歯の先天性欠如

2歳半くらいで完成するといわれる乳歯は、すべて生えそろうと口の中には20本の歯が並びます。
それが6歳から12歳くらいにかけてあごの成長とともに永久歯へと生えかわり、親知らずを除くと28本の歯並びになります。
永久歯に生えかわるスピードには個人差があるため、人より1~2年ぐらい遅くても早くても心配はいりませんが、乳歯がいつまでも残っている場合は注意が必要です。
乳歯は、あごの骨の中で育ってくる永久歯に押されながら、歯の根が吸収されて短くなり、やがて抜け落ちるため、いつまでも乳歯が残っているということは、乳歯の下に本来あるべき永久歯がない可能性があるわけです。このように、永久歯が生まれながらにない場合を「先天性欠如」といいます。
先天性欠如は遺伝や全身的な病気でも起こりますが、近年増加傾向にあるという結果が出ています。
では、どのくらいの子どもに先天性欠如があるのでしょうか。
日本小児歯科学会の調査によれば、乳歯の先天性欠如があったのは0.5%、永久歯の先天性欠如があったのは10.1%だそうです。また、永久歯の先天性欠如は男子より女子がわずかに多く、上あごだけに欠如がある場合は2.5%、下あごだけにある場合は5.7%、上下のあご両方にある場合は1.9%。歯の種類別では、前から5番目(第2小臼歯)と前から2番目(側切歯)の欠如が多いという結果が出ています。
日本臨床矯正歯科医会では、永久歯の先天性欠如の有無を確認するための方法として、7歳ぐらいまでに歯科医院(一般歯科、矯正歯科)を受診し、あごの骨全体を撮影できるパノラマエックス線写真(口の中全体を1枚のエックス線写真で撮影する方法)で確認するよう提案しています。
一般的に、子どもに対するパノラマエックス線写真は健康保険の対象外となることが多く、その場合、撮影するには5,000円ほど費用がかかりますが、これを撮ることで生えかわりが順調に進んでいるか、あごの骨の中に異常がないかなど、口の中全体の歯や骨の状態がわかり、お子さんの歯の生えかわりを予測・観察しながら歯を健康に保つのに役立ちます。もし、先天性欠如が見つかったら、歯科医院で治療に関する長期的な治療計画(対処法)を立ててもらう必要があります。
多くのケースでは矯正治療とインプラントを含んだその後の補綴治療が必要になります。そのうえで、残っている乳歯を永久歯の代わりの歯として大切に使いながら、歯並びや咬み合わせに問題が生じないように管理を続けることが大切です。長期的な来院ですから、習癖の除去や虫歯などの管理も大切になります。
矯正治療では通常は保険治療が認められませんが、2013年度から、6本以上の先天性欠如歯がある場合、「指定自立支援医療機関(育成・更生医療)」の指定を受けている矯正歯科診療所あるいは病院での治療に限って、健康保険が適用されるようになりました。
6本以上の先天性欠如が健康保険の適用になったことで、これまで費用が高くて治療できずにいた人にとって、矯正歯科治療がぐっと身近になったわけです。