子供の歯並びがを悪くする原因2

癖による歯並びの異常

生えはじめはまっすぐ生えていた歯も、毎日無意識にしてしまっている『悪いクセ』が影響して歯並びを悪くしているといわれています。
あなたのお子さんは大丈夫でしょうか?チェックしてみてください。
発育中の子供の骨格はとても柔らかく、ちょっとした癖が歯並びだけにとどまらず、体を悪くする原因になってしまいます。大きな病気のもとになっている口呼吸を始めとして、歯並びに悪影響が出てしまうおそれがある癖をご紹介します。

口呼吸

鼻ではなく、常に口で呼吸をしている状態です。もともと鼻呼吸である呼吸路が鼻や喉の病気によって鼻呼吸をふさぎ、口呼吸にかわってしまったのです。
現在はアレルギー性鼻炎や花粉症もあって、口呼吸の患者さんはめちゃくちゃ増えています。
私は検診などで口の開き方と唇の形を見ています。
山型になっている唇の方は口呼吸をしていることが多いので、その時点で必ず注意をしていますが、昔にくれべて注意する度合いがかなり増えています。(鼻呼吸に戻して、美人の代名詞であるカモメ型の唇になるように口を引っ張りましょうと指導しています)
では口呼吸の影響について考えてみましょう。
通常、口呼吸の影響と書いてある本には、唇で歯を押さえる力がなくなってしまうため、出っ歯、歯並びが崩れる恐れといわれていますが、現在の研究ではそれ以上の病気を引き起こしていることがわかっています。
口呼吸が多くなるということは口を開けている時間が長くなりますので奥歯で噛みしめることが少なくなり、舌が下顎の歯の上に乗り肥大化していきます。
また、ものを飲み込む際には陰圧を作るため、口を引き締めるので口を開けたまま陰圧をかけると頬の力によって上下の歯列が内側に入ってきて閉鎖型の歯列弓になってしまいます。
肥大化した舌は閉鎖した歯列弓の中に入り切れず、上向きに寝た場合に喉を潰していき、睡眠時無呼吸を引き起こします。
奥歯の上には舌がのっていますが、前歯部は空間が空いてしまうため、下顎の前歯が伸びていき奥歯との間に段差ができてしまいます。
段差のある歯列は噛み合わないため、咬頭どうしがぶつかり下顎頭を後方に押しやります。
下顎頭が後ろ側に押し付けられると関節内でショックアブソーバーの役割をしている関節円板は前方転移します。これにより顎関節症が起こっていきます。
顎関節症により筋肉はスパスムを感じ、これが常時起こると口が開かなくなります。
顎関節は関節内で形態を変化させて、顎変形症となります。
通常の呼吸をするのに苦しいため、顎を前方に出したかみ合わせをとり、そのために肩こりなどの背筋痛を引き起こします。
このように多くの歯科の慢性病が口呼吸によって引き起こされています!

指しゃぶり

指しゃぶりをすると歯並びが悪くなるのではと心配し,小児科医や歯科医に相談する保護者が増えていますが、赤ちゃんが指をしゃぶるのは1~2歳までは本能であり,ごく普通に見られる風景です。
「指しゃぶりを何歳ぐらいまでつづけて良いか」 「このまま放っておいて良いか」という質問を受けますが「5歳をすぎたらやめた方が良い」と話しています。
この時期にやめれば、何もしなくても歯ならびが正常に戻る可能性があります。
長期に行うと 歯ならびへの影響だけでなく,「前歯で咬めない」「話し方が舌たらずになる」「食べ物を飲み込む時に前歯の間から舌を押し出す」「口呼吸をするようになる」など歯や口の機能に影響が出てきます。
「指しゃぶり」は,欲求不満,人工栄養,育児環境,学習した単なる癖として残っているなどの説があります。家庭環境,親子関係などにより,子どもに指しゃぶりが現われることもありますが,比較的に多いのは,幼児期の頑固な指しゃぶりが単なる癖として残っているという考え方です。
歯並びとしては指が上下の歯の間に習慣的に挟まった状態になるので、出っ歯、部分的な開咬になることがあります。

舌を突き出す癖(舌癖)

日ごろ夢中になって本を読んだり、テレビを見ているときに口をポカンと開けて上下の歯の間に舌を出していたり、食べ物を飲みこむときに舌をつ き出し、歯を押しだす癖のことを舌癖といいます。
私たちは無意識のうちに1日600~2000回飲みこむ動作(嚥下:えんげ)をしています。
その際に舌の先端は歯につかずに、口蓋を押している(※スポットといいます)いるのですが、舌癖のある人は、いつも舌が下あごや上下の歯の間にあり歯を押しだしています。

※正しい舌の位置(スポット) もっと詳しく

上あごの前歯の後ろにポコッとしたふくらみがあります。
口を開けたままその場所に、舌の先をとがらせてつけてください。
そのとき、舌はどうなっていますか?舌は丸まっていませんか?丸まっているのなら、舌の先に力を入れるようにしてください。そして、その状態をキープしたまま唇を閉じて、奥歯は軽く咬むくらいにして下さい。
それが、リラックスしている時の舌の正しい位置です(この位置をスポットと呼びます)。これをしばらくやり続けて舌が疲れてくる方は、舌が普段正しい位置にない可能性があります。そして飲みこむときには、さらに押し出す強い力が歯に加わるのです。
また、いつも口を開けているため舌が内側 から歯を押す力に対して、外側から押さえる唇や頬の筋肉に力がありません。(これは口呼吸と同じ効果です。)
そのため、舌癖が原因で前歯が出っ歯になったり、歯と歯の間に隙間が開いたり、上下の歯 が噛み合わない歯並びになることが多いのです。(出っ歯、開咬になる恐れ。)
また、話をするときにその隙間に舌が入るため、サ行、タ行、ナ行、ラ行などが舌たらずな発音になることもあります。
鼻呼吸ができない喉や鼻の病気に起因する場合が多いのですが、局所的にも舌の裏のひも(舌小帯)が短い場合や指しゃぶりのために前歯に隙間ができ、舌が出やすいという事もあります。
これを治すためにはMFT(筋機能訓練)を早期に始める必要があります。
正しくない舌の位置を大人になるまで放っておくと、改善を図るのは難しくなります。(まったくできない、というわけではありませんが、治すのに時間が非常にかかる、ということです。)
ですから、小さい子どものうちに、
1.正しい舌の位置(スポット)を覚える
2.正しい物の飲み込み方を覚える
3.それを習慣化していく
ことが重要となるのです。
それをおこなっていく訓練がMFTと呼ばれるものです。月1~2回のペースで行っていき、月2回のペースだと大体6~8ヶ月程度で訓練は終了します。(そのあとメンテナンスで3~6カ月ごとにみていきます。)非常に地味で、ご本人の努力を要しますが、舌癖が原因で歯並びが悪くなっている方は、矯正装置をつけなくても歯並びが改善します。

その他にも下記のようなことが考えられます。

・よく噛まずに食べる

あごの発達が遅れ、受け口や歯並びがガタガタになる恐れがあります。

・頬杖(ほおづえ)

あごが常に片方に押されている状態になるので、左右の顎の位置がゆがんでしまいます。

・同じ方向でうつ伏せで寝る(睡眠体癖:すいみんたいへき)

これも頬杖と同じように、枕で顎がおされている状態が長時間続くので、だんだんと顎の位置がずれていってしまいます。

テレビ

体の正面にない場合に首だけをテレビの方向に曲げながら、食事も含めて日常生活を送っていると下顎が動きについていけずに左右的に顎が歪んでしまいます。

小型のゲーム機

抱え込みながら椅子に座って行うため、首を折り曲げて猫背のまま、長時間同じ姿勢を取り続けるため、首を前に出すようになり下顎が後退しやすくなります。

まとめ

このような長期にわたる様々な癖により歯並びまで変わってしまうと、癖の改善だけでは根本的な解決になることは少なく、矯正治療、顎関節治療、睡眠外来治療そして整体による治療など様々な治療が必要になってきてしまいます。
現在は小学校に入る前からも小児の矯正をすすめるようになってきています。これはこれらの癖をとるという事に大きな時間を割いているからです。通常の矯正は歯並びを治すだけですので、動的な期間は最大で3年ですが、癖を直しつつ、小学校の間をずっと管理するだけでも小児矯正は6年という長丁場です。さらに下顎前突や開口などの場合には、もうすこし早い時期からの矯正が求めらますので、最大10年くらいのお付き合いになります。
大人になってから美的な要素で行う矯正ではなく、お子さんのときから老人に至るまでのあいだ、健康に暮らすためを考えて矯正を行うようにしてください。