歯が抜けたけど、どうすればいい?

乳歯が抜けたらおまじないですが!

乳歯は2歳半で出来上がり、6歳以降に永久歯が出始めると順番に抜けていくのが通常です。
昔から、「健やかな身体に育つように」という願いを込めた言い伝えやおまじないは、各地に多く伝えられています。
上の乳歯を床下へ、下の乳歯を屋根上へ投げるのは、続いて生えてくる永久歯をその方向へちゃんと導いてくれるように、というおまじないです。
またその際、「ネズミの歯のように強くなーれ!」や「ネズミの歯と変ーわれ!」というような願いを掛けることが多いようです。ネズミの歯が後から後から伸び続けることにあやかったのでしょう。
欧米には抜けた乳歯を枕下に置いて寝ると、歯の妖精「トゥース・フェアリー」が集めに来て、代わりにコインを置いていく、という言い伝えがあります。妖精は、きれいな乳歯しか持って行ってくれないということですから、むし歯予防のための戒めになっています。(日本歯科医師会)
乳歯が早く抜けすぎるのは問題(乳歯が早く抜けたというのは別にお話します。)ですが、永久歯が抜けた場合にはおまじないのような悠長なことはできません!
虫歯予防や歯周病予防はあくまで歯が抜けないための予防処置ですが、実際に抜けてしまっては効果がありません。
実際に永久歯が抜けてしまった場合、どんな処置があるのでしょうか?
ここでは歯が抜けてから時間がたった場合のお話です。
歯をぶつけてしまって今ぬけたという緊急事態の話も別にご報告しています。

抜けたところに歯を入れる3つの方法とその問題点

そもそも、歯を失ってしまった時に補う方法は3つしかありません。

(1)ブリッジ

抜けた歯の両隣の歯を削って、橋渡しをするように金属の被せ物を入れて、抜けた歯を人工の歯で補う方法です。抜けた歯の本数が1本〜2本の場合に有効で、多数の場合には適応できません。

(2)入れ歯

入れ歯は、取り外しができる人工の歯のことです。値段も保険が適用になるものならば、それほど高くありませんが、自費治療のものと比べ、材質が異なります。自費治療では、材料の選択肢が増え、薄い材質のもので違和感が少ないものを選ぶ事もできます。

(3)インプラント

抜けた歯の部分に、人工の歯根を埋め込み、その上から人工の歯をはめる治療方法です。自分の歯と同じような使用感で噛み心地が良いのが特徴です。自費治療なので高額になります。また、外科処置が必要になります。インプラント治療については「インプラント治療は怖くない?起こり得る痛みの原因と対処法」でも詳しく解説しています。

ブリッジ

1つ目がブリッジです。
ブリッジは固定式になりますので、取り外したり、装置を洗ったりする手間はかかりません。
保険が適応になるものもありますし、残っているは歯の条件やより審美的、あるいは適合性の良いものを求める場合は自由診療のものもあります。
また、しっかりと両隣の歯に固定されているために、モノを食べる際にも、違和感なく、美味しく食べることができます。
しかし、ブリッジにも問題点がいくつかあります。
まず、両隣の歯で支えますので、一番、奥の歯が抜けてしまうと支える歯がなくなってしまい、ブリッジをかけることができません。
そして最大のリスクは歯を大きく削ることです。
ブリッジは支える歯の周囲を削ってかぶせものをするので、健康な歯を削らなければならないというデメリットがあります。
つまり削った歯に負担がかかってきます。
特に歯の神経がなくなっている場合には、歯が割れやすくなったり、根の再治療が必要になることがあります。
状態にもよりますが10年ぐらい経つと支えている歯に根の治療が必要になったり、破折して抜歯が必要になってしまうようです。
再治療する場合にはまた隣の歯を削るしか選択肢が無くなる場合もあります。
またダミーの歯(ブリッジの削ってない部分の歯)と自分の歯の間には食べ物のカスなどが入り込みやすく不衛生な環境です。
歯間ブラシやフロス(ブリッジ用)などで清掃をして清潔に保ちましょう。

入れ歯

昔からあるのが義歯(入れ歯)です。
義歯は保険が適用されるものもある(ソフトデンチャーなどよりアメニティの高いものは自由診療の場合もあります)ので、安く、手軽に、短期間に作ることができます。
しかし、入れ歯には様々なデメリットがあります。
入れ歯は人工の異物ですので、補う歯の本数が大きくなるほど、口の中に違和感が多くなります。
口の中は繊細に出来ています。
小さなものでも消しゴムサイズ、総入れ歯だとすれば、小さめのおにぎりぐらいの大きさものを口の中に入れるのですから、違和感がないわけがないのです。
特に、入れ歯を支えるための床が大きくなっている入れ歯になると、食品に粘膜が触れなく成るため、食べ物の味や温かさを感じにくくなってしまいます。
また、部分入れ歯の場合、入れ歯を入れる両サイドの歯にバネのようなもの(クラスプ)をかけます。
これによって入れ歯を固定するのですが、咬む度に、入れ歯は、沈み込み、バネのかかった歯が入れ歯本体の手前方向に引かれ続けます。
このような影響でバネをかけられてしまった歯は、5年程度で抜けてしまうことが多いとされています。
バネをかけていた歯が抜けてしまうと、この作用は入れ歯を作り直す度に繰り返します。
このを繰り返しにより、だんだんと総入れ歯に着実に近づいてしまうことになるのです。
さらに入れ歯の場合、ブリッジのように固定式ではなく取り外し式なので、キレイにするために毎日、手入れをしなくてはなりません。(外せるので綺麗にできる側面もあります)
手間であることはもちろん、「他の人に見られると恥ずかしい」ということになります。
また、総入れ歯に近づくにつれて、食べ物がはさまる、痛いなどの理由により、咬むという重要な行為をすることが難しくなる場合があります。
総入れ歯になると、たとえ咬むことができたとしても、自分の歯よりも咬む力が弱くなります。そうすると、固いものなどを食べることが難しくなってきます。
「老け顔になってしまった!」
「大好きだった、ステーキが食べたい」
「カラオケで入れ歯が落ちずに歌いたい」
「たくわんやおせんべいをバリバリ食べたい」
などという、歯があるときには当たり前だったことが入れ歯になってしまうとできなくなります。

インプラント

失った歯を補う3つめの方法がインプラントです。
インプラントというのは、人工の根を歯の抜けたところに植えて、顎の骨にしっかりくっついたのを確認後、その上にかぶせものを装着する方法です(他に入れ歯の支えにインプラントを用いる方法もあります)。
インプラント治療は自由診療の処置しかありませんのでやや高額な治療費がかかる部分がデメリットです。
インプラントのメリットは、天然の歯が顎の骨の中に植わって、顎の骨で支えられているのと同じように、インプラントも顎の骨によって支えられるためにそこだけで処置が終わることです。
したがって、入れ歯やブリッジのように支えとなる歯に負担をかけることがありませんので、他の歯が抜けやすくなってしまうなどの問題が発生しません。
インプラントの治療手順としては、通院期間は通常3~6ヶ月くらいかかります。
その後は月に一度、定期的にチェックと清掃を受けます。

 

大切な歯を失う経験は、とてもつらいものですよね。だからこそ、なくなった歯を補う治療法を選ぶ際には慎重になりたいものです。
ブリッジや入れ歯、インプラントのどれを選択するかというところから始まり、さらにそれぞれに素材の違うタイプのものが揃っているので悩んでしまうでしょう。
どの方法を選ぶかによって今後の生活に影響を与える可能性のあることです。正しい知識をしっかりと身につけて、納得したうえで治療を受けらえるようにしておきましょう。