歯が抜けそう!グラグラする!

歯がグラグラしてくると多くの人は、「もしかしたら抜けてしまうのではないか・・・」と不安になって歯科医院を受診される方が多いと思います。
歯がグラグラする原因で多いのは歯周病ですが、歯周病以外でも歯がグラつくことがあります。
グラつきについては自然治癒というのは難しいので「早めに歯科医院へ」というの合言葉になります。
今回は「歯がグラグラする」原因について解説していきます。

生理的動揺なら大丈夫!?

私たちの歯は、健康な状態であっても多少のグラつきがあります。
これは、歯と顎の骨(歯槽骨)の間に「歯根膜」という組織があるからです。
歯根膜は、噛む時の衝撃を和らげるクッションのような働きをしているため、健康な歯でも力を加えると多少はグラつくのです。(インプラントはこの歯根膜がないので全く揺れませんが、髪の毛など薄いものはかんじなくりますので欠点とされています)
これを「生理的動揺」と呼んでいます。ちなみに、生理的動揺とされるのは0.2mm以下のグラつきであり、それ以上グラついている場合は、何かのトラブルがあると考えたほうがよさそうです。
※歯の動揺度は歯科医師はピンセットで揺らして判定してます。縦揺れはかなり病気が進んだ状態で抜歯しましょうという目安にあります。

歯周病の可能性が大!

歯がグラつく最大の原因は歯周病です。
歯周病というのは口の中の細菌により、歯の周囲にある歯槽骨が溶けていく病気です。
歯周病が進行すると歯を支えている歯槽骨が吸収されていき、やがてグラグラするようになります。
例えば、「口臭がひどい」「冷たいものがしみる」「歯茎から血が出る」などの症状があるときは、歯周病の可能性があります。
歯周病は初期症状がほとんどなく、症状が自覚できたときには重症化していることが珍しくありません。
生理的な動揺を越えて歯がグラついてている場合はかなり進んでいる状態です。
この状態のまま放置しておくと、最終的には歯が抜けてしまいます。

骨が「溶ける」って本当?

歯槽骨が溶かされるメカニズムを簡単にご説明します。
歯周病がひどくなると、歯周ポケットの中の歯周病菌が増殖し、深くまで炎症が進行していきます。
そのまま歯ぐきの炎症が進むと、歯ぐきの下の顎の骨近くまで炎症が進行し、骨髄炎などになるリスクもあります。
しかし、私たち人間には免疫機構があるので、歯周病菌などの細菌による炎症が迫ってくるとそれを察知して、骨は炎症を遠ざけるようになくなります。
この現象が、歯周病で歯槽骨が溶けると言われるものです。
細菌から逃げたために本来、歯を支えるべき骨が減ってしまえば当然「歯のグラつき」につながり、放置しておくと最終的には歯を支えられなくなり抜け落ちてしまいます。

歯周病以外のグラつく原因とは?

歯がグラつく原因は歯周病だけではありません!
以下のようなケースでも「歯のグラつき」という症状が現れます。

一部の歯に過度な力がかかっている場合

一部の歯だけに過剰な力がかかっていると、クッションの役割を果たしている歯根膜がダメージを受け、歯がグラグラしてくることがあります。
一部の歯だけに過剰な負担がかかるケースとして多いのは、噛み合わせが乱れている場合。
また、歯ぎしりや食いしばりのクセがある場合です。

歯の根が割れている場合

歯の根が割れてしまう(歯根破折)と、歯がグラつくようになります。
歯根破折は、神経まで達しているひどい虫歯や過去に神経を除去した歯に多く見られ、歯ぎしりや打撲などの強い外力が誘発原因となります。

歯の根の先に膿がたまっている場合

歯の根の先に膿がたまる(根尖性歯周炎)と歯が浮いたような感覚を覚え、歯がグラグラしてくることがあります。

歯を強くぶつけた場合

スポーツや事故などで歯を強くぶつけると、ダメージを受けた歯がグラグラしてくることがあります。

歯がグラつく時の対処

できるだけ早めに歯医者へ行く

歯のぐらつきを感じたときは、できるだけ早めに歯医者を受診してください。
歯を削る方法と歯を固定する方法が主体ですからご自分ではどちらにしてもできません。
対処法を間違えると、さらに歯のぐらつきがひどくなってしまいます。
歯周病が原因のときは、まず歯周病治療が最優先です。
治療といっても歯周病は症状が止まるか進むかのどちらかなので、早期のうちに食い止める必要があります。急激に進行する可能性もあるので、なるべく早めに診察を受けるようにしてください。

歯ぐきや歯を傷つけるものは食べない、正しい歯磨きをする

歯がぐらついたとき、硬いものなどを食べて歯ぐきや歯を傷つけるのはできるだけ控えましょう。
さらにぐらつきが悪化する恐れもあるのです。
悪化させないために最小限に抑えるためにも歯の負担になるような食べ物は避けてください。
また、歯のぐらつきを抑えたいからと歯磨きをしないわけにはいきません。
ぐらついているときも歯磨きは必要不可欠です。

歯の周りの骨が1/3程度溶けている場合の治療法

歯の周りの骨が溶けて1/3程度までになると全体的に歯がグラグラしてきます。
いつもグラグラしている歯は噛むたびに揺れ、より揺れが大きくなります。
そのため、最終的な補綴物(被せ物)を決めるまでの接着剤でつなぐ暫冠固定(ざんかんこてい)や仮歯を固定してしまう方法などが行われます。
前歯の場合は暫間固定のまま推移を待つこともありますが、臼歯部では被せる冠をつなげてしまう永久固定(えいきゅうこてい)も行われます。

かみ合わせなどによって、歯に大きな力がかかってしまう場合ことでグラグラと揺れてしまうことがあります。

咬合力(噛むときの力)によって周辺組織に障害が出ることを「咬合性外傷」(こうごうせいがいしょう)と呼び、以下の二種類に分類しています。

一次性咬合性外傷

健全な歯に、強い咬合力がかかることで起こるもの

二次性咬合性外傷

歯周病によって周辺組織が弱っている歯に、咬合力が加わって起こるもの

このうち一次性咬合性外傷については「噛み合わせ」や「噛み癖」などをを矯正することで治るケースが多いようです。
歯に余計な力を加えないことを意識すれば、歯のぐらつきも次第に治まってきます。
しかし、二次性咬合性外傷の場合は、歯周病があるため、悪化しやすく、噛み合わせを矯正しただけでは治ることは少ないようです。
そのため特定の歯に力が加わらないようトレーニングをしつつ、同時に歯周病の治療を行います。

歯の周りの骨がほとんどない場合や縦に揺れる場合の治療法

動揺している歯の周りに骨がない場合は抜歯を行います。無理に残すことによって周りの歯の骨まで溶けてしまうことがあります。その後はブリッジ、入れ歯、インプラントなどの治療を行います。

歯根が折れている

歯根(歯を支えている部分)が割れてしまったり、ヒビが入ってしまったりすることを歯根破折(しこんはせつ)といいます。歯がグラつくほかに、次のような症状がみられることがあります。

歯茎の腫れ

周辺の歯茎と比べて、明らかな腫れが現れることがあります。

フィステル(ろう茎孔)

歯根に膿が溜まっているとき、歯茎の表面にニキビのようなものができることがあります。膿はたまると出口を作るためにこのような道をつくるために起こります。

激痛

神経が生きている場合は、噛むたびに激痛が生じることがあります。

歯根破折になる原因としては、「転倒して歯を強くぶつけた」「硬いものを食べた」「歯ぎしり」などが挙げられます。
バキッと大きな音が鳴ることもありますが、寝ている間など知らないうちに割れてしまったり、ヒビが入っていたりするケースもあるので注意が必要です。
歯根が折れてグラついている場合は、ほとんどが抜歯になってしまいます。
放置すると割れた部分やヒビが入った部分から細菌が侵入して、顎の骨なかでさらに重症な炎症をおこす場合があるので、なるべく早めに歯科医院を受診してください。

グラつきは放置しても自然回復しない

今回は歯がグラグラする主な原因について紹介しました。
他にも様々な可能性が考えられますが、共通点として「放置をしても自然に治ることはほとんどない」ことが挙げられます。
歯と歯槽骨(歯を支えている骨)の間には、歯根膜というクッションのようなものがあるので、健康な歯でも指で触れば0.2ミリ程は動きます。
これは生理的動揺と呼ばれ、これぐらいの小さな動揺ならば特に問題ありません。
ただし、明らかにグラつく場合は歯や周辺組織に何らかの異常が起こっている可能性がありますのでなるべく触らないように注意して歯科医院で診察を受けてください。