歯がいきなり抜けた、どうしよう!
何らかの理由によって急に歯が抜けてしまった場合どうすればよいでしょうか?
グラグラしていて抜けたのか、それとも健康な歯が抜けたのかにより、処置方針は大きくかわります。
たとえ歯が欠けていてもほとんどグラついていない歯が抜けた場合は、歯を丁寧に処置してまわりの組織(特に重要なのは歯のまわりについている歯根膜)を温存することが大切です。
今は医療技術の進歩によって、抜けてしまった歯を再度戻すことが可能になっています。
とっさのことで慌てて取ってしまった行動により、歯の周囲組織を温存できず、結局歯を失ってしまう原因になることもあります。 そこで、歯が抜けてしまったときにその場の正しい対処法などをご紹介したいと思います。
歯が抜けてしまったらそのままにしていてはダメなの?
「歯が1本くらい抜けてしまっても噛めるところはたくさんあるから大丈夫!」とお考えの方はいませんか?
歯は1本でも抜けて放置しておくと、残っている歯に大きなダメージを与える原因になります。 残っている歯に噛む力が分散されて負担が増え、残った歯まで弱ってダメになってしまうこともあります。
また、歯が無いままにしておくと隙間の部分に歯が動いてしまい、両隣の歯が傾いてきたり、上下で対する歯が伸びてきてしまったりと噛み合わせに影響が出てしまいます。そのため残った歯が動揺しないようにする処置が必要になります。
1日でも早く歯を戻すことができれば、日常生活を影響なく過ごすことができるのです。
もしも歯が抜けてしまったら…
抜けてしまった歯は大事にして下さい。歯科医院を受診する前に取る行動によって元に戻せる可能性があります。
周囲組織の激しい炎症や歯周病の進行がないことが前提ですが、歯科医院では「再植」といって、抜けてしまった歯をもとの位置に戻す処置を優先的におこないます。 捨てたりせずに必ず持参するようにしてください。そしてできるだけ早く、1時間以内に歯科医院を受診することをおすすめします。
まずは抜けた「歯の歯根膜組織を生きた状態で保つ」ということが重要です。ポイントは乾燥させないこと(水に入れてはだめです)と放置時間を短くすることです。
地面に落ちたらどうする?
歯の根っこの周りには歯根膜組織という歯と顎の骨(歯槽骨)を結ぶ大切な組織が付着しています。この膜を守ることで、再度同じ位置に戻せる可能性が高くなります。
一番良いのは自分のお口の中の環境です。完全に抜け出ていずに戻せるようなら抜けた歯をもとの位置に自分で戻すか、抜け出たならお口に入れたまま(頬と歯の間に挟み込んで)早急に歯科医院を受診します。
もし地面に落ちてしまった場合は、水道水で軽くすすぎましょう。(長時間つけるのはNGです。)
歯根膜組織はデリケートで血液と同じ浸透圧でないと水分が飛び出てしまいます。もし近くに牛乳(できれば開けていないロングライフのパック牛乳)があれば、それにつけて持ってきていただくのも良いと思います。また歯根膜が剥がれてしまうため、ゴシゴシ磨かないようにしてください。もちろんアルコール消毒や石鹼をつけて洗うなどもNGです。
※小学校で起こった場合には保健室に歯の保存液(ティースキーパーネオ)などがある場合があります。これは生体移植用の保存液を歯科で使うためにダウンサイジング(少量化)したものですので、つけておくことである程度長時間の歯根膜組織の生存させることを意図したものです。(大学院時代に私もこのプロジェクトに参加していました。)それにつけたとしてもできるだけ早く歯科医院にいかれることをオススメします。
歯の抜けた穴に触らない
歯が抜けた穴は非常に弱くなったいます。戻すことになった場合の歯ぐきの中の部分です。ここは歯が抜けた後は、周りの組織が薄くなっていて、周囲の骨が弱くなっていたり(骨折しやすい)、細菌感染しやすい場所になっています。
戻した後に歯ぐきが炎症を起こして予後不良になってしまい、安定が難しいという事態になることがあります。無理して歯をもとの穴に戻すよりは、牛乳につけるなどの方が予後は良いとされています。