抜けた歯をもう一度戻したい

再植と移植の違い

「再植」とはこのように外傷や事故などで抜けてしまった歯や、治療をしても上手くいかない歯を一度わざと抜いて(こちらは意図的な再植と言われます)、再度歯を元の場所に戻すことをいいます。
「移植」とは、むし歯や歯周病などで歯を失った場所に、違う歯(親知らずを使うケースが多い)を移し入れる方法をいいます。
どちらもインプラントや義歯とは異なり、自分の歯ですから、生体に対して優しく、歯の機能を生かした方法で、条件が合えばとても有効な方法です。
ただし、再植も移植も歯の条件が制限されますので、すべてのケースがうまくいくとは限りません。また、健康保険が利用できる場合とできない場合がありますので、かかりつけの歯科医院でよく相談をしてから治療してください。

 

 

 

 

 

 

 

意図的再植

意図的再植とは、根の治療が奏功しない場合に一度抜いて再植する方法をいいます。
歯の根のに大きな病巣ができていたり、大きな穴が開いているなど通常の根の治療では治らないようなときに、歯を抜いて細菌感染した部分を取り除いたり、病巣を取り去ってから元の場所に戻す方法です。
また、むし歯が歯肉の深いところまでできているときなどに、一度歯を抜いてから歯の向きを90°または180°向きを変えて、むし歯によって感染した歯質を歯肉よりも上に持ってくるようにして再植することで、後の修復補綴処置を有利にする場合もあります。
これは最終手段です。うまくいかない場合もありますが、歯根膜組織がきちんと保存されていれば、多くの場合は一度抜いても再度歯はくっついてくれます。

 

歯牙移植

むし歯などで歯が抜けたところに、健康な親知らずや、生えている位置が異常などの理由で使用されていない歯などを利用して移植する方法です。これは、ブリッジのように両隣の歯を削る必要がなく、また入れ歯よりも違和感が少なく、インプラントとは異なり、自然な歯の機能を生かせるという特徴があります。もちろんそのまま移植しても上下では噛み合わないので、移植後一定期間してから上部に冠などで修復する必要はあります。
また、もともと歯周病が進行した状態の部位に移植する場合には、サポートする歯槽骨がなくて困難ですし、移植する歯が歯周病で抜いた歯の場合も、歯の周りに健康な歯根膜組織がなくて同じように困難です。さらに歯が抜けてから時間がたち過ぎると、抜けた部分の骨が回復しますから、改めて骨を大きく削って移植しなければならなかったり、親知らずの形態が複根歯などだと難しかったり、いろいろな条件によって予後が左右されやすいなどの欠点もあります。
インプラントに比べると生存率は低いように思えますが、有効利用できる歯があればそちらをまず利用するという考え方もあると思います。

歯牙移植再植の有効利用

歯が失われて義歯にしなければならないような場合、歯の抜け方や残り方によって、入れ歯が安定せず、たびたび歯肉が痛くなったり、よくかめなかったりすることがあります。
特に上や下の片方だけにたくさん自分の歯が残っているのに、かみ合わせの歯がなくて入れ歯を入れないといけない場合や、上と下の歯の残り方が互い違いになってしまって、自分の歯同志でかんでいるところが少なくなってしまっているような場合です。そうなってしまうと、かんでいる歯や義歯のバネがかかっている歯に負担がかかり、次々と歯を失ってしまうことにつながります。
そのような時に、歯を抜いて元に戻せたり、移植して有効に利用できる歯が残っていたり、歯の無い部分に移植することで、不安定な入れ歯の動きを止めたり、そこでかみやすくしたりすることができる場合があります。
ただすぐに入れ歯の土台に加えることはできず、ある一定期間はちからを加えらないので、時間がかかる処置ではあります。

歯の再植・移植のトラブル

再植や移植は必ずしもすべてうまくいくというわけでなく、術後にトラブルを起こすこともあります。
例えば移植したけれど、歯根膜組織がきちんと付着せずに脱落してしまうことや、再植や移植をした歯が数年たったあとに、歯根膜組織の損傷した部分から、歯が溶けてむし歯になったり、急激な炎症性の吸収を起こしたり、骨と癒着してしまうことなどがあり、それらの危険性を理解したうえで行う必要があります。
また、上下の歯は移植だけでは噛み合わないので、殆どの場合は冠をかぶせますし、通常の歯ほど強い噛み合わせはさせられないという現実もあります。