自分の口が臭いと思う
自臭症と呼ばれている病気があります。
口臭や体臭というのは、自分で臭いと思っているだけで実際には対して臭っていないという場合があります。
これを自臭症(じしゅうしょう)といって、周りから臭いと思われていると思い込む自己臭症(じこしゅうしょう)または自己臭恐怖症(じこしゅうきょうふしょう)とも呼ばれています。
対人恐怖症の1つとされていて、外見、臭い、表情、しぐさ、自分の口の臭いなどが、他人を不快にするのではという恐怖が常に起きている状態です。
ご自分の性格として、几帳面あるいは潔癖すぎる方に多く認められます。
周囲の人に口臭や体臭などを指摘されることで、本来であれば取るに足らない行動も自身からの臭いによるものであると思い込んでしまうために発症するそうです。
つまり完璧、完全志向が強い人ほどこの症状に陥りやすいのです。
本来、体臭、口臭(加齢臭を含む)は少なからず誰にでもあるものです。
しかし、自臭症の人はこれを誇大解釈してしまい、少しの臭いも許せなくなります。
また、心の病として、うつ病を併発する方が多いのも特徴です。
気にしすぎなければいいと言えば簡単ですが、実際の臭いは殆どないのに、心理的要素、苦悩が全面に出てしまうのが本症の特徴です。
治療法としては、歯科での問題がおきていないことをまずは確認する必要があります。
歯科医では、レントゲン検査や直接的な官能検査(臭いを嗅ぐ)、口腔内診査、口臭測定器による検査のほか、唾液・尿・鼻・舌などの検査を行います。これらの検査によって、口臭の原因を突き止めます。
しかし、歯周病も含めてほとんど臭うような部分がない場合には自臭症を疑い、患者さんの精神面に気遣いながら診療を勧めます。
そのため投薬等ではなく、基本としてはお話をするだけの面接となります。まずは自身から発せられる口臭や体臭などが決して他人に迷惑をかけているわけではないことを自覚していただくことが重要です。
自身の実際の臭いと、自身が悩んでいる事の食い違いを修正するのが必要があります。
歯科でできるのはココまででそれ以降は精神科でのバックアップ的な治療が必要となります。
しかし、歯科治療でいらした患者さんに「精神科での診療が必要」というのは、患者さんにとっては大きなハードルになる場合もあるので「欧米のセレブは精神科の先生が支えている人が多い」などの話をさせていただきます。
また、病気が進まないうちは、実際に臭いがあるかどうかは自分でも曖昧であることがあります。
この時期なら精神科を受診しやすい、させやすいものです。
そのためには、自己臭症という病気があるという知識を持っていただくことが大切です。
自己臭症は統合失調症の初発症状のこともありますから、治療を早く始めるにこしたことはありません。
そして、他者は臭いを感じていないという事実に気付けるようサポートを行うことも大切です。
実際に患者がいろいろな人たちと共同での生活を行った際、他者は全く臭いを感じないことを自分自身で理解し、自信をつけたという例もあります。
※精神科ではさらに進んだ認知療法を行ったり、敢えて人ごみや会話など恐怖を抱く場所に、身を置き徐々に恐怖を取り除く方法、暴露療法、また神経症で広く応用されている森田療法なども行われます。